|
「もう秋だね」 「秋だねー」 「こないだまで暑かったのにね」 「今日なんて寒いぐらいだしね」 甲子園が終わってから落ち着いたのか、最近は朝練だけとか、ミーティングだけとかが少しだけだけど、あって、結構勇人と一緒にいる時間が増えた。 今日もミーティングだけで、こうやって一緒に帰ってる。同じクラスでもないから、甲子園中や前は、1日1回も会話できない事が多々あった。 だから、こういう、何気ない会話ができるという事が、すごく幸せなことなんだ、と感じて、頬が緩んだ。 「そろそろ衣替えの季節だ」 「あ、そっか。秋冬用の制服、準備しなきゃだ」 「どんなのにするの?」 「そうだなー・・・勇人はどんなのがいい?」 どんな質問でも、勇人は真面目に考え、答えてくれる。 今も隣で「んー」とか「あー」とか呟きながら頭を抱えてる。悩む姿は可愛い。いいや、悩む姿も、可愛い。 「セーラー服、がいいかな」 結構な時間がかかった割には普通の答えで。それなのに、勇人の顔は心なしか、あかい。 「セーラーか・・・うん、じゃあセーラーにしよっかな」 「ほんと?」 「うん、なんで?嬉しい?」 「嬉しい!」 言った直後に勇人はしまった、という顔をしてそっぽを向く。 「え、なんでなんで?」 「いや、あー・・・なんでもない」 「なんでもないことないじゃん、勇人、顔あかいよ」 「・・・知ってる」 「ねー教えてよー」 「・・・いや、やっぱさ、いいじゃん、セーラー」 「なんで?」 「男のロマンとでもいいますか」 「えー!!170cmもない男がそんなこといいますか!」 「身長は関係ないだろ!」 「あはは!でも、そうか・・・セーラー服って男のロマンなのか・・・ふぅん・・・」 「な、なんだよう」 「勇人も男なのね」 「うわーむかつくーそのニヤけた顔が本当むかつくー」 「あはは!・・・あ、着いた」 いつの間にか、私の家についていた。徒歩で40分ぐらいかかるはずなのに、時が経つのってはやい、な。 「明日は朝練あるの?」 「あるよ」 「そっか、今日ミーティングってことは明日の放課後は普通に部活だね」 「多分、そうだと思う。あ、けど明後日の朝練はなかった気がするから一緒に行こう?」 「うん!分かった!、じゃあ、ばいばい!」 「ばいばい、またあした」 Uターンして家路へとつく勇人の背中に手を振って、私は早く明後日になればいい、と思った。 すると勇人が急に振り返って、こちらへと歩いてくる。 「どうしたの?忘れ物」 「・・・うん、忘れ物」 そう言って勇人は、私に、本当に触れるだけの、キスをした。 「ね、俺だって立派な男でしょ」 そう言って勇人は帰ってきた道を戻り、今度こそ、家路について帰ってゆく。 私は勇人の後姿が見えなくなるまで、ただ何も言えず、勇人を目で見送った。 もう、秋だ。 夏のあの、じりじりと肌の焼ける日差しや、セミの鳴き声の変わりに、冷たい風や、鈴虫が鳴いている。 私は秋の冷たい風で頬を冷やしながら、「そんなの、しってる」とだけ呟いた。 秋風が吹く頃 私は幸せの体温を知るのです。 (07,09,30_01) |